作者自身の頭の整理のためのメモです。その時々の思いを綴っていきますので、過去記事と内容の重なりがあるかも知れません。(リンク・フリーです。) Photos in the articles: Courtesy of Tarisio Auctions
by violink
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イザベル・ファウストのバッハの世界

昨日、彩の国さいたま芸術劇場に、イザベル・ファウストのバッハ無伴奏ソナタ・パルティータ全曲を聴きに行ってきました。とても楽しく、また、多くの気づきのある演奏会でした。これまで表に出ることのなかったこの偉大な作品の奥底に秘められたメッセージの一部を垣間見るような、本質の一端に触れたような、そのような充実感を覚えるひとときでもありました。東京オリンピックの年にちょうど300歳となるこの偉大な作品も、やはり、その時代時代の、優れた演奏家の手によって初めて生き永らえてきたのだ、そして、今後もそのようにして生き永らえていくのだ、と実感する機会にもなりました。

調性とか、旋律と伴奏とか、対位法とか、そのような言葉を以て語ろうとすれば、この作品の演奏時間(約3時間)を優に超えることになるのでしょう。細かい音の動きの中に、いろいろな仕掛けが隠されており、それぞれの仕掛けにどのくらいの存在感を与えるかということに、解釈の余地が多く残されていることが、演奏者の違いによってこの作品の表情がまるで異なることの背景にはあるのでしょう。今回の演奏は、どこか、そのような仕掛けの在処をすべて見つけ出して、それらの仕掛けに確かな存在感を与えるような演奏であったことに加えて、その背後には、厳然たるカトリック教会の石造りの重々しい建物のような、堅牢な構造物のようなものの存在を醸していたと思います。

彼女は、バロック弓を使用して演奏していました。バロック弓は現代弓ほど先が重くなく、その分、アップボウの入りでアクセントを付けるのが難しい、ということもありますが、その分、強拍と弱拍の差を付けやすいとか、弓元での重音(3~4音)を弾く時の操作がやりやすい、という特徴もあります。彼女の演奏は、全体として軽やかな要素があると思いますが、その表現にはバロック弓が貢献している部分も少なからずあるでしょう。

また、ソナタやパルティータの1曲が大きな縦長の厚い紙に4ページ仕立てで張り付けた譜面も印象的でした。1曲の中での緊張感を途切れさせないための工夫なのでしょう。ただし、決して張りつめた緊張感に終始するのではなく、彼女自身が演奏することを楽しんでいる様子も、そのステージの上での踊るような動作から感じ取れました。時に両足ともつま先立ちとなり、時に両膝を軽く曲げて、、、といった動作が、それぞれの箇所での音による表現と相俟って、より明確なメッセージとなって伝わってきました。

全体を通じて、ほぼノン・ヴィブラートでしたが、旋律の最後のロングトーンでは、弓をゆっくり波打たせることにより控えめなヴィブラートの効果を出していました。

個人的に最も勉強になったのは、移弦に伴う右手の動きで、四重音を弾く時の動作や、細かい動きで移弦が多く出てくる時の動作など、同じ移弦でも、右手の関与する範囲が手首から先だけとか、腕全体とか、いろいろ異なりますが、その使い分けが見事でした。また、すべての音が、その音に応じたクリアさで発音されていましたし、また、弓が弦から離れるときに楽器の響きを殺さないということが、すでに無意識になのだろうとは思いますが、徹底されていたと思います。
by violink | 2013-11-04 06:35 | Concert
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