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作品を知るための「遊び」
音楽作品の作曲のプロセスを僕たちが知ることは、まずありませんが、出来上がった作品のもつニュアンスを汲み取る上で、作曲家が行っていたであろう推敲のプロセスに類似した「遊び」を行うことは、役に立つと考えています。
例えば、ベートーヴェンのソナタ第5番第1楽章の冒頭。A-GFEFGFED,C-DCHCDCBA,G-FCF^FD,C-Bという有名な4小節のメロディーがありますね。このうち最初の2小節の3、4拍目の音の動きが逆であったら、どんなメロディーになっていたでしょう。 A-GFEDEDCD,C-DCBABAGAと、例えばこうなるわけですね。もとの節とはどう違っているでしょうか。1小節目は、Fの音の存在感が薄れて、代わりにDの音の存在感が大きくなっています。2小節目は、BとAの音が目立ち、また、もとの2小節目には出てこないGが登場します。 この結果、これらの2つのメロディーの聞こえ方は、全く異なったものになっています。この作業をすることによって、もとのメロディーが持つ響きについて何らかの示唆が得られないでしょうか。 更に言えば、この4小節では、ピアノの左手は、F^FDGと動いています。各小節毎の調性上、根音になる音をなぞっています。もとのメロディーは、主として、この根音の上に作られる三和音と溶け合う音で作られていますが、もう一つのメロディーでは、この三和音に関係のない音の存在感が大きくなっています。 こういう「遊び」を敢えてやってみると、もとのメロディーの必然のような部分がみえるとは思いませんか。こうでなくてはならない、という作曲家の意思が伝わってくるような気がするんですね。もちろん、ベートーヴェン自身が、この粗製のメロディーを推敲した可能性は低いと思いますが、もとのメロディーの持つ意味合いを照らす一助にはなると思うんですね。
by violink
| 2006-02-08 18:25
| Interpretation
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