調性の変化とは、つまり転調ということですが、ひとことで転調と割り切れない世界が、ここにはあると思います。
日本語で「転ぶ」というと、「転ぶ前の状態」→「転んだ後の状態」と一足飛びに行くわけですが、転調というのは、そういう「転」のニュアンスでは、必ずしもないんですね。
もちろん、小節線をまたいで調性が変わる(=譜面上も、実際上も)ということは、普通にいろいろあります。しかし、それだけではなくて、前の調性と後ろの調性が一時期重なり合っているような場合もありますし、前の調性から後ろの調性がセオリー通りの分かりやすい場合もあれば、どうしてこの調性からあの調性へ? というような奇抜なものもあります。
こういう奇抜な転調の例は、プロコフィエフの作品などでよくみられるものですね。奇抜な転調は、セオリー通りに行かないところにある種のエネルギーを感じますし、そういうエネルギーを使って転調させている、というような、いわば「力ずく」というニュアンスが欲しいところです。
転調を巡る表現の仕方は、どの調性からどの調性への転調であるか、特に、それがセオリー通りの転調か、いささか奇抜な転調かによって、表現の仕方自体が変わってくると思いますね。