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テンポ、ダイナミクス、そして調性
昨日たまたま、とある著名なカルテットが演奏するラヴェルのカルテットの録音を聴いたのですが、とても表情豊かな演奏で、いろいろな気づきがありました。
その際たるものは、テンポとダイナミクス、そして調性は、お互いに独立ではなく、密接に関係しているということです。 本当は、こういう書き方をするのは本末転倒だと思うのですが、敢えて書きました。 例えば、誰かが自分の目の前で、楽しかった話、悲しかった話、つまらなかった話を順に話したとします。恐らくは、それぞれに顔の表情、声の調子・スピード・高さなど、楽しさ、悲しさ、つまらなさのニュアンスを帯びていたことでしょう。 しかし、話を聞いて、「彼の話は、顔の表情と声色とが密接に関連していてニュアンスに富んでいた」という感想を持つ人はいないでしょう。また、「よし、自分の話をニュアンスに富んだものにするために、顔の表情と声色との関連に注目しよう」とも思わないでしょう。 というわけで、本末転倒だと思うのですが、厳密に振り返れば、人間も、自己表現の形を習得するプロセスが幼少の頃にあったはずですし、ましてや、顔や声で自己表現することに比べてはるかに間接的な、楽器による自己表現となると、そのようなプロセスを意図的に経る必要があるとも言えると思います。 ここでは深入りしませんが、楽譜に書かれていることは、作曲家の思いを記号化したものであり、どうしても大づかみになっていると思います。半音の進行は、音程が連続したサイレンのようなものの近似値かも知れませんし、複雑にみえる音の組合せは、もっと複雑な音で構成される鐘の音を模したものかも知れません。 そういうところに、解釈の余地が生まれるのだと思いますし、今回のテーマにしたテンポ、ダイナミクス、そして調性の関係についても、例えば、アレグロとか、フォルテとかと明確に指定するほどではないごく僅かな変化を伴って転調が行われることで、その場所でその調性が持つカラーが引き立ってくるということがあるのだな、ということです。 そういうことを何よりも感じさせられた演奏でした。
by violink
| 2007-08-20 02:10
| Performance
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