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<音楽という言葉>調性のせめぎ合い
「はい、ここからは何調でしょう?」と、あるスコアのある部分を指差して尋ねるA君。「C-durです。」と、得意げに答えるB君。「いや、E-durでしょう。」と、低い声でさも自信ありげにつぶやくC君。
スコアのある部分とは、ブラームスの交響曲第4番の第2楽章の終わりから7小節目のpoco rit.の次の小節からです。この小節に関しては、確かにC-durとE-durのブレンドのような響きがします。このブレンドが絶妙ですね。 E-durの音階をみてみましょう。上記の箇所では、Gisは出てきますが、Fis、Cis、Disは出てきません。もしこれらの音が出ていたならば(=チェロがアルペジオではなく音階をやっていたならば)、よりE-durの香りが強くなっていたでしょう。そうせずに、しかも、Gisを管楽器ではなく弦楽器が担わせて、音量のバランスとして、Gisを隠し味として使いながら、Eの音をベースとする響きを作ることで、E-durのニュアンスがC-durとの関係でバランスよく響きますね。 さて、調性のせめぎ合いのことですが、この楽章の終わりから5小節目では、管楽器がC-durを基調とし、弦楽器がE-durを基調として、管弦の音量バランスの中でそれらの絶妙なブレンドの響きになっていますが。その弦楽器の中で早くもC-durへの傾斜が始まっています。それは、その小節の5、6拍目のストバイのG-B-As-Gの音列で、E-durになくC-durにあるGの音が出てくることで、C-durへの傾斜が聴こえて来るんですね。 そして、2小節の間に弦楽器がどんどんC-durに傾いていって、終わりから3小節目の頭で管弦すべてがC-durに収束したようにみえます。E-dur とC-durの戦いはC-durの勝ち、という勢いです。が、何と、その小節の後半から最後の小節にかけて、「死んでしまった」はずのE-durが謎の復活を遂げるのです。 この意外さを何とかして聴かせたいものですね。恐らくプロの指揮者でそう感じる人も多いのでしょう。終わりから4小節目の後半のディミヌエンドのところで、楽譜には書いてありませんが、ごくごく控えめなリタルダンドというか、終わりから3小節前の頭を丁寧に入るというか、そういう気配りをしている演奏が多いように思います。 でも、この部分は実に難しい箇所です。というのも、C-durで終わる素振りを見せつつも、そこで終わってはいけなくて、本当の終わりは押しも押されぬE -durだからです。その展開の中で、音楽が停滞してはいけないのです。C-durで終わるというフェイントを聞かせようとし過ぎると、音楽がそこで止まってしまうんですね。 押しも押されぬE-durということについて言えば、最後の和声はもちろんE-durの3和音ですが、E、Gis、Hの中で、C-durにはないGisを強調するようなオーケストレーションになっているように思います。安定したピラミッド型の響きというより、E-durという調性の特徴を強調したような感じでしょうか。 さらに言えば、以上に書いた「調性のせめぎ合い」の箇所では、GとGisのせめぎ合いがとても重要だと思います。それ以外にもあるC-durとE-dur の間でぶつかる音は、そのうちの一方が巧みに避けてあって出てこないのです。(それはFis、Cis、Disのことです。)その意味で、GがC-G-Eの和音の中で果たす役割、GisがE-H-Gisの和音の中で果たす役割がきちんと聞こえるような音程で、GとGisを聞かせる必要がありますね。
by violink
| 2004-08-27 08:51
| Interpretation
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