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<音楽という言葉>自分の感覚を研ぎ澄ましておくために
自分が演奏しようとして練習する作品というものは、大抵の場合、既に何度も聴いたことがあって、その全体の構造なりメロディーなりが何となくは分かっている場合が多いですね。オーケストラの作品であれば、ここでどの楽器が出てきて、とか、ここであの楽器とこの楽器がユニゾンになって、とか、いろいろ分かるものです。
そういう状態では、その作品の一歩先が読めてしまっているわけですね。予想通りの音が出てくるわけです。これは当然といえば当然ということなのですが、こういう状態では、その作品の音なり響きなりに対する自分の感覚は磨きようがないと思うのです。 初めてその作品を聴いたときに自分が受けた印象を大切にすべきだと思うんですね。初演のときにお客さんが感じるような印象こそが大切だと思います。 例えば、ベートーヴェンのバイオリン協奏曲の第一楽章。ティンパニに続いて木管楽器の主題が出てきて、弦が弾く最初の音はDisですね。D-durの調性の中で出てくるDisの持つ響きに、私たちは大いに驚き、印象付けられるべきなのだと思います。これが、聴きなれてくると、「木管が終わって弦が入ってきたな」くらいにしか感じなくなってしまいます。 CDなどで聴き慣れた作品を、こういう新鮮な感覚で聴くようにすると、いろいろな新たな発見があると思います。作曲家の意図が何であるかということはともかく、まずはそういう発見をすることが、その作品に対する自分なりの理解を深め、また、自分なりにこう弾きたいという欲求にたどり着くための、避けて通れない第一歩なのだろうと思っています。
by violink
| 2004-08-11 09:11
| Interpretation
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