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<告白編>匿名性のない音楽
ITが発達して、ネットでのコミュニケーションが普通になる中で、1軒のショップが相手にする客の数は膨大になり、見知らぬ人同士のやりとりも活発になっている世の中であっても、音楽の世界は、スポーツなどと同様、コンテンツがITによって影響を受けない世界の一つだと思っています。
マルチメディアの時代になっても、ブログが発達しても、僕たちが求めるのは、ある演奏家によるある楽器の演奏であり、それはある日ある時、その瞬間だけになされるものですね。均質なサービスとはほど遠く、また、演奏者の方はインタラクティブな感覚でコンサートに臨んでも、聴く僕たちの方は一方的に受け取りに行く世界。 誰が弾く何の曲なのか、それを明確に把握してからコンサートに出掛け、CDを購入する匿名性のない世界。同じ曲の演奏を別の演奏者で聴こうとするのが、「繰り返し」と思わない世界。それは、演奏者毎の演奏の違いを善し悪しでなく、多様性として受け取ることが自然に出来ているということなのでしょう。 人それぞれ個性があり、だからこそ、時にはぶつかり傷つく。。。という当たり前の人間関係が、心地よくない人間関係は避ける、という方向に向かってしまっている現代に生きる人間の一人として、音楽を聴くことで人間の多様性を連想するのは僕だけでしょうか。。。 そして、顧客本位のマーケティングがこれだけ普通になった世の中で、顧客(お金を払う)がお店(演奏者)に対して、尊敬を、憧れを、そして時には畏敬の念を抱きながら、サービス(演奏)の提供を受ける数少ない世界の一つなのだろうと思います。 ともすれば希薄となり、また失いがちなものに、音楽の世界に生きる中で曲がりなりにも自分自身をつなぎ止めておきたい、と感じる今日この頃。そして、音楽の世界は、人間の本来の何かを取り戻すきっかけを与えてくれるものと信じてもいて。 人間、失うということは一瞬に起こるとは限らない。むしろ、実は徐々に失うからこそ、失い切るまで気づず、気づいたときには時すでに遅し、ということが多い。そういう自分も無意識のうちに何かを失いつつあるに違いない。。。(笑)
by violink
| 2005-09-19 07:36
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