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表現するためのボウイング
ボウイングは、そもそも音を出すためのアクションですが、音量、音色と直接関係するアクションですので、ボウイングと表現とは、常にセットで考えていた方がよいと思います。
オケの練習中に指揮者から「もっと歌って!!」とか言われることがありますよね。すると、意識はすぐに左手、それもヴィブラートに行きがちです。それは、指揮者のアクションとして、左手でヴィブラートをかけるようなアクションを見せて、「もっと歌って!!」を指示していることからみても、かなり一般常識的になっていると思います。 ところが、実際はヴィブラートよりもボウイングなのですね。ボウイングが関与しない表現なぞ、どんなにヴィブラートでがんばっても貧相なものです。ノンヴィブラートでもとても音楽的に聞こえるケースもありますし、それだけ、ボウイングによって表現される部分は大きいのだと思います。 さて、ボウイングで表現するためには、単に滑らかに一定の音量で音が出せればよいということではなく、その先を目指す必要がありますね。その先の目標は2種類あって、①弓のスピードを自在にコントロールできることと、②駒からの距離に応じて、特徴ある音色を作れること、ということだと思います。 まず①ですが、これはまず、一定のスピードでボウイングができることが基本ですね。その上で、弾き始めのところで瞬間的に音を立ち上げる(=瞬間的にスピードを上げる。)ことがあり、さらに、弓の返しで瞬間的にスピードを変えること、弓の途中で瞬間的にスピードを変えること、ができるようにするということです。 瞬間的、ということがポイントで、これがなかなか上手く行かないのですが、上手く行かないとどうしても表現がボヤけてしまいます。例えば、ピアノという楽器を思い浮かべてみましょう。ピアノは鍵盤ごとにタッチを変えることができるので、ここで言う「瞬間的」ということが、いとも簡単にできてしまいます。バイオリンでは、ある程度意識的にやらないと、瞬間的にスピードを変えられるようなボウイングには辿り着かないと思います。 次に②ですが、これは①ができることが前提となりますが、要は、駒からの距離に応じて、その場所で出せる音の特徴を余すところなく出そうとすると、場所毎にもっとも適当な弓の圧力とスピードの組合せがあるということです。これは、弓のスピードの制約条件にもなることなので、①の先で神経を使うべきことなのだと思います。 まあ、いずれにせよ、そういうことに気をつけることで、普段、左手のヴィブラートに頼りがちな表現の部分に、右手のボウイングをより積極的に関わらせることができるようになると、表現の幅はぐっと広がる可能性が出てきます。そこまで来れば、後は本人の表現のセンスの問題ですね。実は、ここが一番の鬼門なのですが。。。(笑)
by violink
| 2007-08-12 07:25
| Bowing
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